ACT 4
部屋のドアを開けた途端、二匹の猫たちがわらわらと飛んでくる。
「遅くなったねー、ごめんよー」
足にまとわりつく猫たちに触れると、こわばっていた身体の力が抜ける。
二匹とも待ってましたとばかりにご飯を平らげてしまう。
その食べっぷりはいつみても可愛いものだ。
「そういや、俺もなんか腹減った」
いろいろと思いが交錯して腹に詰まったような気分だったために、空腹なのを忘れていたらしい。
スーツを脱ぎ棄てて、傍にあったジーンズとセーターに着替えると、小銭を持って近くのコンビニに向かう。
雨のせいでじっとりと湿気に包まれる。
弁当を食べる気になれず、おにぎりを二つとビールを買って帰りしな、工藤と下柳がぼそぼそ話していたのを思い出し、何やら気になった。
「アイダが、とかって聞こえたけど」
深刻そうな顔をしていた。
「アイダって相田企画のことじゃないよな」
相田企画はやはり二人とは長いつきあいのイベント会社である。相田夫妻と五、六人のスタッフがいたはずだ。
「まさかまた猪野プロみたいなこと、ないよな」
口にして、嫌な気分が渦巻いた。
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