夢のつづき43

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「有吉がどうしたって?」
 夕方、オフィスに戻ってきた工藤に、良太は有吉に対する文句をぶちまけた。
「そりゃ、腕のいいカメラマンで経験もあるんでしょうけど、性格悪過ぎ! なんだか知らないけど俺に突っかかってきやがって。今朝も空港で……」
「空港でどうした」
 良太はいいかけて口ごもる。
 自分のことならまだしも、自分のせいで工藤の悪口を言われたなんて。
「いえ、俺、今朝慌てて出てったから、タイもちゃんと結べてなくて、そしたら、直してくれたのはいんだけど、襟元くらいきちんとしろって……」
「襟元?」
 怪訝そうに良太を見た工藤だが、有吉の言葉の裏を読んでハハハ、と笑う。
「何すか? 俺、そんな、変ですか?」
 いきなり笑われて、良太はぶすくれる。
「いや、身だしなみはきちんとしろよ」
 工藤は良太の襟元にちょっと指を差し入れ、その頬をぺちっとはじく。
「おい、今夜は久しぶりにまともな飯を食うぞ」
「あ、はい。『夕顔』? 俺もすんげ久しぶりだ」
 食い物の前には、嫌なことはふっとんで、良太はいそいそと工藤の後に続いたのだった。

  おわり


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