夢のつづき5

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「業界では鬼が走り出したって、どこでも戦々恐々だって話だよ」
 今日もまた、夕方、良太の好きなシュークリームを手土産にふらりと現れた藤堂が言った。
「はあ??」
 怪訝な顔で聞き返す良太に、
「いや、だから工藤さんがあっちと思ったらまたこっちって具合に頻繁に顔をみせるものだから、青山プロダクションもいよいよ危ないだとか、業界大手を乗っ取るつもりだとか、さ、根も葉もない噂が飛び交っちゃって」
 と肩をすくめてみせる。
「なんですか、それ」
「まあね、勝手に言わせておけばいいさ。にしても、うちの河崎なんか仕事大好き人間だから、工藤さんから声がかかって喜んで飛びまわってるよ。お陰で佐々木さんも仕事量が増えるし、こっちまで忙しくて、とんだとばっちりだよ。良太ちゃんも同じくだろ? 目にクマこさえて」
「はあ、社長が忙しくしてるのに、部下が遊んでるわけにもいかないんで。って、藤堂さん、どこが忙しいんです?」
 藤堂はバッグから薄型モバイルを取り出して、たまにちょこちょこやりながら、さっきまでのんびりと鈴木さんの入れてくれた紅茶を手に、藤堂はアカデミー賞の話で盛り上がっていたのだ。
「おやおや、これが忙しくないって?」
 画面をちらっと見れば確かに、メールチェックやネットを見て遊んでいるわけではないことはわかるのだが、藤堂は何をしていても、忙しくみえたためしがない。
「まだ悠くん制作中なんですね。だから、うちにも帰れず、こんなとこきて油売ってるわけだ」
 ようやくお茶とシュークリームで人心地ついた良太は、思い当ってそう口にする。
 悠は藤堂の同居人で、絵描きである。

 


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