大澤が大仰に感慨深げにそう締めくくると、場内も沸いた。
自分こそ、最初は傲慢で我儘で散々周りに手を焼かせたくせに、と良太は大澤を見て苦笑する。
本谷はとりあえず笑っている。
「大澤くんもそんなことが言えるくらいな余裕が出てきましたよね、最初はこの人どうなることかと思ってましたけど」
すかさずアスカが言うと、「お互い様じゃないの? アスカさん」と大澤がしれっと返す。
また会場がどっと沸く。
会見はそんな感じで、スタッフや俳優陣も笑顔で、案外いい雰囲気の中終了した。
「工藤さん」
裏で会見を見ていた工藤と良太は、その声に振り返った。
「今回はほんとにお世話になりました」
そう言うと本谷は深々と頭を下げた。
「すごくいろいろ勉強になりました。ありがとうございました」
「放映はまだこれからだ。礼を言うのは早いぞ」
そうやって捻くれたことを言うんだ、このオヤジは。
おべんちゃらなくまともに頭を下げられるのが照れ臭いってのもあるらしい。
良太は隣でフンと工藤をチラリと見やる。
「はい、ちゃんとチェックします。広瀬さんにもお世話と言うかご迷惑おかけしました」
「いえ、俺は仕事ですから、次も頑張ってください」
「はい」
にっこり笑うと、失礼します、ともう一度頭を下げ、本谷は待っているマネージャーのところへ小走りで戻っていく。
何か、踏ん切りがついたような表情をしている、と良太は思った。
そういうきっかけとか、あったんだろうか。
でも、やっぱ、俺なら、簡単に思いきれないだろうな。
「田園の方も、チェックしておけよ」
仕事の鬼が隣で言い放った。
「はい」
ちぇ、ちょっとは本谷の心を思いやるとか、ないのかよ。
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