秋山は心の中で呟くと紅茶を飲み干した。
まあ、この二人は何だかだ言ってお互い気心が知れているわけで、アスカにとっては大事な友人に違いない。
なかなか信頼できる友人などできないアスカだが、青山プロに移籍したことは彼女にとっていいチョイスだったわけだ。
いや、大概の社員にとっても同じようなことが言えるのかもしれない。
自分はもとより、何かしら問題を抱えていた人たちにとっては、特に。
ああでも、やはり良太の存在は大きいのだろう。
良太が、頑なな工藤を変えてきたことは確かだ。
無論、工藤にとって良太は何を置いても大切な存在なのだ。
工藤が巻き込まれた冤罪事件にせよ、やはり良太が中心にいてこそ解決したのだから。
本谷にはそこまで知る必要はないが、工藤にはこれ以上拘わらない方がいい。
秋山はケーキを食べ終わってもまだこそこそと言い合いをしている良太とアスカを見ながら、そんなことを思っていた。
「アスカさん、これから移動でしたっけ」
紅茶を飲んでようやく落ち着くと、良太が尋ねた。
「そうよ、長野ロケ」
今撮影中のコメディドラマにヒロインとしてアスカは出演しているのだが、年明けの放映予定で主演の岡村浩紀のスケジュールに合わせているので、割と長いスパンで撮影をしている。
長野の農家の息子が東京の美人OLに一目ぼれして猛アタックし、OLの方は付き合っていた男が出世のために社長の娘であるOLを利用しようとしていたことがわかり、男を振って会社も辞め、ヤケクソで長野に移住するという内容である。
「面白そうですよね、そのドラマ」
「まあ、そうね。割と面白いかも」
「相手役の岡村さんとは、どんな感じです?」
実は最近岡村とのツーショットを写真誌に載せられたりと、アスカにしては珍しくイロコイ沙汰で少し騒がれた。
「ああ、それこそ、あれよ。岡村の事務所の策略で、宣伝のためにあたしを利用したのよ。ムカつく!」
「やっぱり」
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