二村も笑った。
良太は志村や桧山にもサンドイッチを持って行った。
「良太ってさ、時々、工藤さんより怖って思うわ」
ボソリ、と志村が言った。
「何ですか、それ」
心外なと良太が眉を顰める。
「二村さん、良太に助けられたつもりで、実は怖いこと言われてるって気づいてないし。百二十パーセントとかって」
「うーん、そうっすね。二村さんて、スポンサー推しだけど工藤さんも了解したわけじゃないですか。だから力はあるんだと思うんです。でも見てると考えてやってないなって。彼女の場合、百パーで満足してたらそのうち消えちゃいますよ。工藤さんが怒るのそこなんだと思うんです。彼女クラス山ほどいるし」
「ほら、怖いこと淡々と言うし。まあ、俺も、口には出さないけど似たようなこと思った。あれでやる気が出たら、良太Pの株がまた上がるな」
からかい半分の志村を、「やめてくださいよ」と斜に睨む。
その時、工藤が日比野と何か話してから良太を見た。
「これから東洋商事ですか?」
良太は工藤に駆け寄った。
「あとは頼む」
それだけ言って工藤はタクシーを呼ぶために通りを渡ろうとした。
「あ、ちょと待って、工藤さん」
「何だ」
「一つだけでも食べてってください」
良太は持っていた袋からサンドイッチのパックを取り出すと、蓋を開けた。
工藤は仕方なさそうに一つをつまんで咥えた。
良太が缶コーヒーのプルを開けて渡すと、工藤は手に取って信号が変わった横断歩道を渡っていった。
「やるねえ、良太くん」
振り返ると日比野が立っていた。
「工藤さんに有無を言わせず食事をとらせるとか」
「ったく、俺は工藤さんのママかって思いますよ」
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