良太はブツブツと口にする。
「いやいや、良太くんのこと工藤さん頼りにしてるんじゃない?」
「とんでもない、ナマイキなヤツくらい思ってんですよ」
日比野がサンドイッチをまだもらってないというので袋から新しいパックを出して缶コーヒーと一緒に渡すと、良太は志村や桧山がいるところに戻って、工藤にひと切れ渡したパックを開けて残りを口に入れる。
「工藤さん、東洋商事?」
「ええ。大事なスポンサーですからね、何を置いてもって感じ」
志村に聞かれて良太はコーヒーを一口飲んでから答えた。
「東洋商事って、綾小路さんとこですよね?」
それまで黙ってサンドイッチを食べていた桧山が口を挟む。
「ええ。綾小路さん、ご存じですか?」
ああ、千雪さん経由だからか。
良太は勝手にそんなことを考えた。
「ご存じってほどじゃないけど、十一月にやる舞台、紫紀さんがぜひ観たいって言ってるって千雪から」
「十一月舞台やるんですか?」
良太はつい聞き返した。
「良太も来る? ボスと一緒に」
撮影では工藤のことを桧山はボスと呼ぶようになっていた。
タカヒロ、はプライベートと分けているらしい。
撮影を見ていて、桧山の舞台に興味を持ったのは確かだ。
おそらく工藤も観たいところだろう。
ただ、時間が取れるかどうかが問題だ。
「何なら、チケット用意しとくよ。綾小路一族と一緒に」
「綾小路一族ぅ?」
「紫紀と小夜子と大、千雪と京助、それから彼らの両親」
「いや、観たいのは山々だけど、工藤も俺も時間が取れるかどうか。工藤にも聞いておくけど」
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