残月8

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 良太はきっぱりと言った。
「そうだな」
「そういえば、まだ未定ですが、それに皆さんのスケジュール如何なんですが、実は少人数な分、社員のための慰労パーティをやれないかと模索中なんです。業者さん向けの忘年会とは別に、社員の家族の皆さんとかもご参加いただいたりという。どう思われます?」
 今のうちに聞いておこうと、良太が切り出すと、志村は、「いんじゃない?」と即座に頷いた。
「珍しいね、社で何かやるとか。いいと思うよ」
 小杉にも賛同を得て、良太は少しほっとした。
 先日、工藤が社員でハワイかグアムでも行くかなどと言い出した時は、人と群れることの嫌いな工藤がそんなことをと良太も少し驚いたが、それはおそらく工藤の社員への謝意のつもりなのだろうと推し量った。
「ああ、でも、もう一つ案があって、これもスケジュールの都合次第なんですが、みんなでハワイかグアムに行くという。福利厚生ってやつです」
「へえ、それもいいね」
 志村はそうは言ったものの、「しかしみんなのスケジュール合わせるのって難しいよな」と付け加える。
「行けたら家族とか喜ぶだろうけど、やはりスケジュールがね。福利厚生なら、ほら、軽井沢の別荘、誰でも使えるようにしてくれてるじゃないか」
 小杉が笑う。
「うちの家族も夏や冬たまに利用させてもらってるよ。俺を除いてだけどね」
 良太は言おうかどうしようか迷ったものの、今は鈴木さんと志村や小杉が社内では一番古株にあたるわけで、工藤とも長い付き合いなのだからと、口を開く。
「実は、工藤さんが言い出したんです。多分、社員の皆さんに色んな意味で礼のつもりもあるんだと思うんですよ」
 すると小杉がはあ、と一つ溜息をついた。
「わかるよ。あの人、いろいろ言われているし、一見して強面な雰囲気だけど、実際義理人情に篤い人だもんな」
 しみじみと話す小杉に、志村も苦笑しながら頷いた。

 


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