「そうなんですよね。何せ、昭和のオヤジだから」
良太の言葉に小杉も志村も声をたてて笑った。
「旅行は無理でも、パーティならいいんじゃないか? せっかく工藤さんがそう言ってくれるのなら、ちょっと計画してみてよ」
志村が言うと、小杉は早速タブレットを取り出して、志村のスケジュールを確認した。
「皆さんに何日か候補を出していただいて、じゃあ、計画進めてみますね」
「色々大変だろうけど、良太ちゃん、よろしく!」
今日のロケには南沢奈々はいないが、明後日はN大学でのロケが入っているので、その時に聞いてみようと良太は自分のタブレットでチェックする。
鈴木や平造、それにアスカ、秋山組には既に都合を聞いているし、工藤の予定も把握済みだ。
ただし、工藤の場合いつイレギュラーな事案が入るかわからないのが問題なのだが。
独立はしたが元所属俳優の小野万里子や万里子の夫で嘱託カメラマンの井上もメンバーにいれておかなければ。
良太はタブレットでメンバーリストをササッと作成した。
「明日はいよいよ『からくれないに』の制作発表だっけ?」
ふいに志村に言われて、良太ははたと面倒な予定を思い出した。
「はあ、そうなんです。何とか、それさえ済めば」
「良太ちゃん、眉間に皴。なんか工藤さんじみてきたな」
志村に指摘されて、良太は思わず額に手を当てる。
「やめてくださいよぉ、工藤さんと一緒にしないでください」
「いつから放映だっけ?」
「十九日です」
紆余曲折あったミステリー作家小林千雪原作のドラマ『からくれないに』も、やっとここまできたか、という感慨はある。
先日滞りなく制作発表が行われた『田園』のほうは、まだ十二月の頭まで撮影が残っているが、放映は数日後に迫っている。
しかし何しろ俳優陣のメンツをみても何が起こるかわからないので、撮了までは気が抜けないのだが。
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