好きだから 103

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 稔が声を張り上げた声に佐々木が我に返ると、左隣の女子が佐々木越しに稔にかみついた。
「それだけの実力しかなかっただけじゃん!」
「フン、わりぃな、ホームラン競争できっちり実力をみせてやるぜ!」
 稔が身を乗り出すようにして、佐々木の隣の若い女子に言い放つ。
「ちょと、稔さん、大人気ない!」
 佐々木が窘めると、仕方なく身体を引っ込めたが、隣の女子も稔もテンションは下がっていないようだ。
 プログラムはホームラン競争から始まった。
 五人の選手が十スイングでホームランが何本出るかを競うのだが、あらかじめネットファン投票を募った上で選出されている。
 ホームラン王スワローズの山本、タイガース沢村、レッドスターズ八木沼、ホワイトベアーズ水谷、ジャイアンツ北野と、大柄のパワーヒッターがずらりと並ぶ。
 北野がまず打席に立つと、観客は一気に盛り上がる。
 十スイングという限られた中で、北野は最後のスイングで何とか三本のホームランを揃えた。
 二番手の水谷が二本で終わると、次にホームラン四本で締めくくった八木沼に対して声援と共に黄色い声が会場に乱れ飛ぶ。
 そして沢村が打席に立つと、また場内が沸いた。
 大画面に沢村の真剣な表情が映し出されると、佐々木は声援どころか何やら自分までが打席に立っているかのような錯覚に思わずぐっと拳を握りしめる。
 そして初っ端から沢村の打ったボールは大きな放物線を描いて外野上段まで運ばれた。
 入った途端、場内がどよめく。
 沢村が豪快にスイングすると同時に、佐々木は心の中で入れ、入れと喚いていた。
 テレビ画面で見るゲームとの違いはこの臨場感だ。
 ゲームはやはりスタジアムで観戦した方がいいに決まっている。

 


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