好きだから 105

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 戦国時代やあるまいし、自分の城を守るために子供の結婚までを利用しようなんぞという連中はロクなもんやないが。
 そういえばうちのお母ちゃんも横浜の叔母さんも要は金目当ての政略結婚やったんやな。
 ほんでも、横浜の篤子おばさんはええ人と縁があったわけや、あの夫婦ほんま今でも仲ええし。
 お母ちゃんは逆にまさしく貧乏くじ引いたな。
 しょうもない亭主はとっととこの世におさらばしてもうて、後に残されたんは高い税金と古いだけのあばら家。
 しかも息子はそのしょうもない亭主の血を引いて、てんで商才もないと。
 家や母親のことを考えただけで佐々木は溜息がでる。
 せや、あの母親を背負っていかなあかん身としては、世間から奇異な目ぇで見られて細々とした仕事に差しさわりがあってもな。
 まあ、いざとなったら、何もかんも処分して、お母ちゃんと二人、どっか部屋でも借りればええんやけどな。
 などと思うものの、茶道の師範としての矜持もあるだろう母親にはあの家を出るとかは論外だろうと佐々木は思い直す。
 つらつらそんなことを佐々木が考えている間に、今度は五名のピッチャーによる奪三振競争が始まっていた。
 沢村は三塁側のベンチ前に誂えられた椅子に座っていた。
 隣にいる八木沼が何やらしきりと話しかけているようだった。
 場内ではいつの間にか奪三振競争の優勝選手が決まり、賞品を手渡されていた。
 プログラムはトークイベントへと移る。
 これも特設ステージに十名ずつが上がり、選手へのインタビューと会場の観客とのQ&Aで進んでいく。
 司会のアナウンサーが挙手した観客の中からランダムに選ぶと、アシスタントがシートまで行ってマイクを差し向ける。
「山本選手、来年のホームラン何本うちますか?!」
 母親らしき女性の横でちょこなんと座っている小学生の女の子が大画面に映し出される。
「そうですね、五十本目指します!」
「がんばってください!」

 


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