好きだから 11

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「賢兄愚弟を絵にかいたような息子たちですが、さすがに智弘も野球などやっていても早晩限界がくることはわかっているので、いずれはうちの事業の一端を担わせるつもりでいます」
 宗太郎が例によって自己中なことを言い出した。
 あんたに俺の先行きをああだこうだ言われる筋合いはない。
 第一勘当を言い出したのは父親本人だ。
 おそらく父親は沢村のことを上辺だけでしか見ていないのだろう。
 沢村がウイルソンと一緒に興した会社のことや沢村のなした財についてもプロ野球選手として世の中が騒いでいる程度しか認識していないに違いない。
 沢村にしてみれば当然、今更実家の事業に携わるつもりなど毛頭ないのだ。
 だが、次に山名が余計なことを言いさえしなければ、沢村もじっと我慢でスルーしていただろう。
「実和はこう見えて料理の腕はなかなかなんですよ。女はやはりまず料理ができませんとな、いい嫁として男に仕事をさせられませんからな」
 こういう昭和な、いや明治かよ、な男がいつまでもそんな御託をぬかしてるから日本は見掛け倒しの後進国なんだよ。
「料理は女性に限らないでしょう。今いいなと思っている相手も料理がうまいんです、男ですけどね」
 一瞬沢村の言葉を反芻するかのように場が静まり返り、次には山名がハハハと笑い飛ばした。
「そ、そりゃ男でも料理は……コックとか男が多いですしね」
「俺、付き合う対象を女性に限ってないんで。まあ今は男の方がいいかな」
 ここまで言うつもりはなかったのだが、ついつい山名をぎゃふんと言わせたい衝動に駆られてしまった。
「まったく、冗談もほどほどにしろ、智弘」
 宗太郎が剣のある言葉で沢村を詰る。


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