好きだから 110

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「まあ、なんつうか、病院に一人医師団にいたっつう医者が来て、感化されちまって」
「息子さんとはちょくちょく会ってるわけ?」
「健斗? そこは自由に、予定が会えば」
「健斗か。いくつ?」
「六歳になる。今度の春、小学生だ」
「へえ。写真見せてよ」
 佐々木に言われて、稔はしばしもじもじしていたが、たたたっと携帯で画像を探して、黙って携帯を佐々木に差し出した。
「うっそ! これシェパードやろ? 健斗、六歳? でか! 稔さん、まんまやない」
 シェパードの首に腕を回して笑っている少年は、佐々木の記憶にある稔そっくりで、六歳という年齢にしてはかなり大きく見えた。
「クッソ! 環希のヤツも何かってぇと、健斗のことミニ稔、とかってからかいやがって」
「DNAがここまで人を定義づけてるいうの、初めて見たわ」
「るっせ!」
 表参道の交差点までいかないうちに右へ折れ、佐々木が案内したのはとんかつ屋だった。
「おう、されたレストランよりは百倍ましだな」
「前に仕事で連れてきてもろて、美味いんや」
 腹が減っていた上に歩いたのでとんかつ定食を二人とも黙々と食べた。
「ふう、食った食った」
 お茶をごくごく飲んでから、稔が言った。
「もろ、オヤジやな」
「るっせ!」
 稔とどうということはない話をしながら、佐々木の思考はいつの間にか沢村へと向かう。
 どこかで別れを言わなければならない。
 それはずっと考えていた。

 


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