好きだから 114

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 俺にはあんな笑顔を取り戻してやることができんかった。
 つまり、俺って疫病神なんやない?
 友香にも、それに、沢村にとっても。
 知らず佐々木は大きく溜息をつく。
「お前、何、悩んでるんだ?」
「え?」
 唐突に聞かれ、佐々木は一瞬戸惑う。
「こないだの飲みの時も、どっか変だったぞ」
「いや、ここんとこ、疲れとったし。のんびりやっとった俺には仕事超過やったからな」
「そうか? 四時半か、どうだ、予定がなけりゃ、この後、飲み、行くか?」
 稔は疑わし気な目を向けながら言った。
「飲み?」
「今日のデートはそれでゴールだ。付き合ってくれた礼に奢ってやる」
「はは、デートって」
 そうやな。
 佐々木は帰って一人になったら、言い知れぬ寂寥感に襲われることを懸念した。
「どこでも、何だったら、しゃれたバーとかでもかまわないぞ」
「いやあ、この燕でしゃれたバーとか、ないわ。なんなら近場でええし」
 じゃあ、また藍屋でも行くか、と稔は、やはり何かを抱えているような気がする佐々木を連れて地下鉄で半蔵門へと向かう。
 藍屋に落ち着くと、佐々木は打って変わって上機嫌で、稔に野球の話をふる。
 稔は部類のプロ野球ファン、スワローズファンで、亡くなった名監督の話や、かつて日本シリーズを連続で制した時、どの選手がどう戦ったかなどと、身振り手振りで語りはじめる。
 酒が入った稔の話はつきることがない。

 


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