好きだから 115

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 近年スワローズは低迷しているがまたいずれ必ず蘇る、と拳を固める稔を見つめながら、佐々木はうんうんと聞いているが、そのうち酔いが回って半分も頭に入らなくなった。
 サラダを食べたくらいで今は厚揚げをつついている佐々木が、手酌で日本酒を何本か開けているのに気づいた稔は、やはり佐々木がどうも危なっかしいと判断すると、またグラスに注ごうとしたボトルを取り上げる。
 腕時計を見ると、八時になるかならないかだった。
「お前、やっぱ、今夜、おかしいぞ」
「んなことないって」
「帰るぞ、送ってく」
 立ち上がった稔についてのそのそと店を出た佐々木は、いきなり冷たい風に吹きつけられて肩をすぼめた。
 稔はそんな佐々木の手を引いて歩き始める。
「俺、ええ加減、稔さんの好意を利用してる気いするわ。稔さん、あんまし優しうしてくれても、勝手なやっちゃし、俺」
「フン、今更だろ。いいから利用しておけ」
 確かに飲み過ぎて、顔だけが熱い。
 風に当たってると、せっかくの良いが醒めてしまいそうだ。
 ふと見上げると、風に雲が流れていた。
 知らんうちに、こうやって時間も流れていくんやな。
「ほら、ついたぞ」
「おおきに」
 稔は生垣の中から裏木戸を探し当てて開けると、佐々木の腕を引いたまま、離れへと歩いていく。
 ところが、離れのドアの近くまで来て、稔は足を止めた。
 ドアの前に立つ大柄な人影に気づいたからだ。
「そいつ、誰?」
 好意的とは思えないその声に、稔が反応した。

 


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