好きだから 117

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 一度もゲームを見ることもなかったのにと、暗に言っているのだろう。
「あいつがどこのファンだろうと、どうでもいいさ。でも随分親しそうだったし? 二人で飲んできた帰り? これからあんたの部屋にしけこむとこだった? 俺が邪魔しちまったってわけ?」
 嘲るような言いぐさに、佐々木はカッとなって思わず拳を握りしめた。
「ちが………」
 違う、そうじゃない、と言おうとして口を噤む。
 いきなり現れるよって、我を忘れるとこやった。
 別れを言おうと思うとったんやった。
「……稔さんは、ガキの頃からの幼馴染で、この春に海外から帰ってきたんや。たまたまおかんを連れてったらいてはって、何年振りかで会うたんや」
「へえ、それでもりあがったってわけ?」
 沢村は茶化すように言った。
「……重いんや」
 佐々木はようやく絞り出すように言った。
「え?」
「やから、重いんや。ちょっと会うためだけに、何や工作せんとあかんとか、嗅ぎつけられんようにこそこそせなあかんとか、ええ加減疲れる。そんなん、重いんや、俺には」
「そんなもんどうでもいい! 嗅ぎまわってるやつらには勝手にやらせとけばいい。俺だってこそこそしたくなんかねえよ!」
 沢村は激昂する。
「そんなわけにいかんことはわかっとるやろ? プロスポーツの人気選手なんやで? ファンとかサポーターとか、球団とか、裏切るようなマネ!」
「裏切るって、プライバシーと仕事は関係ない!」

 


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