好きだから 119

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 無意識のうちにドアを開けた佐々木は、沢村を追いかけようとしている自分を、かろうじて押し留めた。
「何やってんのやろ、俺………ええ年して」
 眠ろう。
 とにかく今は。
 呪文のように心の中で繰り返しながら佐々木は寝室に向かい、ベッドに腰を下ろし、目を閉じた。
 いつの間に眠ってしまったのか、記憶がなかった。

 朝になったようだ。
 目が覚めた佐々木は、昨夜のコートのままなのに気づき、そして昨夜のことが現実だったのだと茫然と思い知った。
 着ているものを脱ぎ捨ててシャワーを浴びると、もう出かけなくてはならない時間になっていた。
 佐々木はごく普通にオフィスに向かい、ごく普通に仕事をしようとした。
 しているつもりだった。
 だが、やることなすことおかしな方向に行くばかりで、仕事ははかどるどころか、今までのデータを壊しかねないことに佐々木は苛立った。
 お昼は直子に買ってきてもらった弁当を食べ、いつの間にか午後一時を過ぎた。
 いつの間にか直子が、佐々木の弁当の空やお茶などを片付けていた。
 自分のデスクに向かわなくてはと、自分に言い聞かせ、モニターを見つめる。
 指定した色がデタラメだった。
 頭の中がぐちゃぐちゃだった。
 映し出されているデータを見ているのに、認識できていなかった。

 


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