好きだから 121

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 沢村のサルーンなどとは比べ物にならないが、安定感、乗り心地からも古くても自分にはこの車がありがたい。
 時折、軽までもが追い越していくのを見ると、頑張るよな、と感心してしまう。
 音を入れてみると、直子がこの車を使った時にセットしたままのメディアからメタル系が流れてきた。
 タイトなビートのヘヴィロックは今の佐々木には小気味よく響く。
 地獄の鐘も鳴る、ってか?
 今の俺にジャストフィット、いうやつ?
 直子はコンパクトカーだろうが、ビュンビュン飛ばす派だ。
 確かにこういうのをガンガン聞きながらなら、どこまでもやな。
 ふと出がけに見た直子の心配そうな顔が目に浮かぶ。
 直子にはあらゆる面で世話をかけっぱなしで、これ以上心配をかけたくはないのだが。
 横浜新道出口で降りると、そのまま国道一号線を進み、佐々木は江ノ島方面へとアクセルを踏んだ。
 江ノ島が見えてきたところで、一三四号線へと車を走らせる。
 もう二時間ほども走ったろうか。
 何年か前、この辺りに撮影に貸してもろたカフェがあったな。 
 少し休むかと佐々木は左折してそのカフェへと向かう。
 車を降りると目の前に海があった。
 小雨が降り続いていたがそのまま少し海へと歩いた。
 雨のせいもあってか冬に間近い海は暗く、青というより濃いグレー寄りの色を見せていた。
 ぼおっと立っていた佐々木は、小雨でもいつの間にか濡れてきたことに気づき、海から引き返した。
 車だったためにニットはタートルでもマフラーだけで来てしまった。
 急に寒気がして、カフェへの階段を上がってドアを開けた。

 


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