好きだから 124

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「マジでモデルとかじゃない? ってか、もうこのままモデルになんない? こいつとの絡み、マジ、イケてるし!」
 そういえば隣に立っているハーフっぽい男も、一緒に入ってきた何人かの男女もどうやらモデルのようで、何かの撮影だったのだろう。
「おい、シンちゃん、いきなりナンパしてびっくりしてるって!」
 隣の男も笑いながら佐々木をまじまじと見る。
「や、でも、どっかで会ったことない? モデルじゃないっけ?」
 苦笑してその場を立ち去ろうとした佐々木に、慌ててシンちゃんと呼ばれたカメラマンがポケットから名刺を取り出して差し出した。
「からかってんじゃないからさ、マジ、考えてみてよ? こいつらの事務所にすぐ紹介するし」
「いや、悪いけど。もっと若い子に声かけた方がええんやない?」
 その時、賑わし気な店内のようすに気づいてカウンターの奥から男が小走りにやってきた。
「あ、すみません、やっぱり、佐々木さんですよね? オーナーの小暮です」
「ああ、その節は、どうもお世話になりました」
 佐々木は若い連中からようやく離れてレジに向かう。
「申し訳ございません、お寛ぎのところを。知り合いのカメラマンなんです。雑誌の撮影とかで、若い人たちは遠慮も何もないですから」
 声を落として小暮は自分のことのように非礼を詫びた。
「いえ、ごちそうさまでした」
「またのお越しをお待ちしております」
 造りもロケーションもそれこそ絵に描いたようなこのカフェだが、人を惹きつけるのは小暮のセンスの良さと丁寧な対応の賜物だろう、映画やドラマのロケにも使われることがあるらしい。
 多少突っ走り気味なのは若いやつらの特権だ。
 やりたいことに一途に向かっているのを見るのは悪くない。
 お陰で俺の頭も目、覚ましたらしい。
 明日はブライトンの撮影やしな、しゃんとせな。
 佐々木は暮れかけた雨の中を一路家路へと急いだ。

 


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