好きだから 126

back  next  top  Novels


 マシーンを相手に二人は競争するかのようにガンガン飛距離のあるバッティングを披露している。
 「パワスポ」は他局の取材が終わった最後に二人にインタビューすることになっていた。
 良太はしばらく沢村のバッティングを見ていたが、やがて大きく息をついた。
 先月末、沢村に小田弁護士からの報告を連絡した時も何となく感じていたことだが、何か違和感がある、のだ。
 父親らをとっとと逮捕でもしろというくらいな態度で、父親や父親が取締役を務める朝日ホールディングスの顧問弁護士真岡に代理人である小田弁護士を通して告訴も辞さないことを突き付け、父親との決別すら望んで息巻いていた沢村だが、実際ほぼ決着がついた事実を告げると、わかった、世話をかけた、と、あまりにも沢村らしからぬ殊勝な態度に良太はむしろ面食らった格好だった。
 沢村の父親はともかく、小田が青山プロダクションだけでなく沢村の代理人として真岡の事務所に赴き、沢村の意向を告げた時、真岡は拍子抜けしたように、智弘くんが、と呟いて後、今後一切、沢村の周囲を探るようなことはしない、もちろん、沢村の知人友人に対しても同じくと、全面的に小田の提案を受け入れた形になった。
 沢村の父親にもきっちり要望を飲んでもらうことも確約した。
 親の過干渉にしては盗撮や盗聴など犯罪の域に入るような行為を激怒していたはずの沢村だが、親に対して告訴などやり過ぎだと今更ながらに思ったとか、はあり得ない、と良太は思う。
 だったらなんだ?
 それにあいつが自分ち以外で無精髭とか、ないって。
 違和感は今日の沢村の外見からもうかがえた。
 良太が知る限り、プライベートじゃなければ無精髭はないし、八木沼が相変わらずサービス精神旺盛で、一人ボケ突っ込みがまた大いに受けているので、一段と沢村の不愛想なのが際立っている。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ