好きだから 133

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「まあ、そのうち消えるよ」
「何ゆってんの、ネットに出ちゃったら半永久的に残るって、佐々木ちゃんだってわかってるでしょ」
 二人が帰ってからも直子はぷりぷりと怒りをあらわにしていたが、幸田が帰り際、置いていった大きなものが気になって、梱包材を取り外し始めた。
「お詫びにもなんないけど、もう佐々木さんのデータは削除するし、ただ、これだけ、どうしても俺の中では見てもらいたくて。あとは捨てるなりしてくれていいんで」
 中から現れたのはB0判のポスターパネルだった。
「うっわ……」
 しばし絶句している直子の横に立った佐々木も思わずうっと言葉に詰まる。
 縦位置の画面に大きく写っているのは例の店で海が見える窓辺に座る佐々木だった。
「ナニコレ? どうしてあいつが佐々木ちゃん撮ってんの? これ、マーレでしょ? いつだったか撮影に使った?」
「参ったな、前に煮詰まって頭冷やそう思て、湘南走った時たまたま店寄ったら」
「たまたまあいつがいて思わずシャッター押しちゃったわけか。まあ、わからないでもないけど。それで、どうする? これ、オフィスの看板にしちゃうとか、窓の外に掲げて」
「え、冗談やで、そんな!」
「だってこれ、かなりクール、イケてるし、って、何せ被写体が佐々木ちゃんだからね~」
「はあ?」
 直子の指摘ははたから見れば的を得ていた。
 憂いを含んだ表情の佐々木と雨模様の海辺の背景が一つの世界を醸し出していた。
 だが、佐々木からすれば重苦しい疲労困憊な自分をバカでかく引き伸ばしたものなど、人目にさらすとかあり得ない。
「ほんま、冗談やないわ。こんなでかいもん、どないしょ。捨てるいうても………」
 佐々木が自分の容姿のことになると、どうしても客観的に見られないのをよく知っている直子は思案した。
「わかった! 一番いい方法!」

 


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