好きだから 138

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「まあ、そういうやつやないと、面倒なプロジェクトも引っ張っていけへんのかもな」
「それだけじゃなくて、見かけにこだわるやつはクリエイターとしてはダメとか、石器時代かっての。ま、目力とデカい声以外、平々凡々なおじさんだからしょうがないけどね」
「石器時代って」
 佐々木は笑う。
「ああ、でも、八木沼のCMってことは、沢村っちとも会えるかもね? 二人で自主トレやってるんだし」
 直子の言葉に、佐々木は一瞬固まった。
「仕事やから、関係あれへんよ」
 口にした言葉から、何かボロが出ないだろうかと、佐々木は直子の視線を外す。
 いくら一緒に自主トレをやっているからといって、仕事は八木沼とで沢村とは全く関係のないことだ。
「せや、今夜稽古やったな。先週休んでもたし、今日は気合入れてやらんと、オカンにまたどやされるわ」
「そうだ、あたしも、同じくだわ。初釜まで一か月きったもんねぇ」
 直子は定時の六時であがり、オフィスで佐々木の夕食分と一緒に出前を取り、カツ丼をそそくさと食べると、佐々木家へと向かった。
「ごちそうさま! お先に失礼しまーす!」
 週一のお茶の稽古の時は、直子は弁当などで食事を済ませてからオフィスを出るようにしている。
「直ちゃんには世話になってるし、そのくらいはいつでもどうぞ」
 稽古は七時からなので、外で食べるとあまり時間が取れないだろうと、佐々木が勧めたのである。
 お茶の稽古にはできれば着物で行きたいからと、直子は最近、土曜日には着付け教室にも通い始めた。
 幼い頃から親に習い事をやらされていたというが、ピアノはかなり上級者だし、ヘビメタ命の直子だが、案外日本文化的なものも好きなようで、とにかくやるとなれば努力家だ。

 


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