好きだから 141

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「……いえ、今年はダメです。色々忙しいらしうて。三十日は業者を手配しました」
「そうですの」
 それだけの会話だったが、落ち着いていた心の内が見事に混乱して、以来、佐々木が一手動かすたびに淑子の叱責が続いた。
 全く、やからオカンに会わせたりするのは嫌やったんや。
 それに、土地のことかて、勝手に買うたりするよって。
 まあ、土地は不動産業者にまた売らせるしかないやろけど。
 まだ、何か建てたりする前でよかったわ。
 建ててからやったらまた面倒なことになる。
「あんなみっともない点前で、初釜なんてまともにでけしまへん。心して精進しなさい」
 稽古が終わっても淑子の叱責は手を緩めることがなかった。
「はあ、すみません」
「ほんまに、返事まで間抜けてます!」
 はああ、と脱力した佐々木は、とろとろと片付けに取り掛かった。

 


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