好きだから 142

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 朝、十時半に迎えに行くからと今西に言われていた佐々木が十時少し前にオフィスに行くと既に直子は来ていて、室内は温かかった。
「おはよう! 今日一団と寒いね~! 昨夜お稽古遅くなったでしょ?」
「おはよう。はあ、みっちりやられよった。片付け終わったら一時過ぎ」
 はあ、と、朝から佐々木は溜息をついた。
「しょうがないよね~ 若先生とか上級者は一門を率いて行かなくちゃだから、先生も厳しくなるのよ」
 はい、コーヒー、と入れたてのコーヒーを佐々木のデスクに置いて、直子は一人頷く。
「おおきに。まあな~、オカンも俺がぼんやりなもんやから、よけいアタリも強くなるわ。聞いても、右から左やし」
 佐々木は笑う。
「でも先輩方も佐々木ちゃんのこと一目置いてるよ? 決める時は決めるって」
「昔からの人、ずっとやっててくれはるからな、ありがたいわ」
 苦笑いした佐々木は、コーヒーを飲んで壁の時計を見た。
「今日は八木沼っちと平野璃子と顔合わせだっけ?」
 平野璃子は最近売り出し中の可愛い大学生で、CMやドラマにちょこちょこ出ている。
 今回のCMには八木沼と共演予定だ。
「うん、そうなんやけど」
 迎えにくるとか、顔合わせ、ホテルの部屋とかなんやろか。
「とにかく、超寒いからしっかりコート着てった方がいいよ」
 打ち合わせやクライアントと会う時のために、佐々木もオフィスに何着かジャケットやコートなどを置いている。

 


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