好きだから 145

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 それでも十分にその迫力は伝わったと思っていたのだが、先日チャリティイベントに行った時も実際に見るホームランに感動し、さらにここまで近くで実際のスイングを目の当たりにした佐々木は圧倒されていた。
 同時に自分の仕事のあまりなずさんさを今思い知ったのだ。
 自分がスタジオに行くからという沢村に従ってしまい、本物の沢村を見損なっていた。
 空気感といい打撃音といい、スタジオなどでは到底比べ物にならない迫力だ。
「さすが、プロは違うぜ、ド迫力!」
「そういえば、沢村って確か、ポスティングでMLB行くって、騒いでなかったか?」
「だよな、あれって、いつの間にぽしゃっちゃったのか」
「沢村くらいな実力なら、向こうでもやっていけんじゃね?」
 カメラマンの大崎と今西の部下の林がそんなことを話しているのが佐々木にも聞こえてきた。
 あいつ、MLBって………まさか………! 俺は、何て愚か者なんや! そんな大事なことさえ、邪魔しとったとしたら……!
 自分にはもう、沢村から離れるしかなかったのだと、そうしなければいけなかったのだと、佐々木はあらためて思い知る。
 この一年、沢村にどれだけの無理を強いていたのかと。
「ひょとして、CMで共演する人なん? はじめまして!」
 佐々木の思考を唐突にぶった切って、すぐ前に立った男を佐々木は訝し気に見上げた。
 目一杯の笑顔と期待に満ちた目で、八木沼は勝手に佐々木の両手を握りしめた。
「こないなめちゃきれいな人とと一緒できるとか、俺、超うれしい!」
 大型犬のような無垢な目の八木沼は佐々木を覗き込んでいる。


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