好きだから 146

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「あ、いや、俺は……」
「え???? 男なん?」
 それで離れるかと思った佐々木の両手を八木沼はさらに握りしめる。
「うっわ! これって、神様の思し召し云うやつ? 俺、初めてや! 男にめちゃときめいてしもた! すんげ、こんなことってあるんや!」
 佐々木は思い切り八木沼の手を振り放した。
「ええ加減にせぇ! 共演者はあちらの平野璃子さんや!」
 八木沼は佐々木の剣幕に言葉もなく突っ立っている。
 ほんまに、こんなことほんまのタレントにやってたら、セクハラで訴えられるで!
 佐々木はさらに、植山のことまで思い出して胸糞が悪くなった。
 実際仕事先であからさまに誘われることは幾度となくあった。
 ったくどいつもこいつも!
「まあまあ、お二人とも。申し訳ない、沢村選手のバッティングに夢中になって、ちゃんとご紹介してませんでした」
 やり取りに気づいた今西が慌てて二人の間に入った。
 八木沼のマネージャーもあとからやってきて斉田と名乗った。
「こちらはクリエイターの佐々木さんです。八木沼選手、あらためてご紹介します、今回共演される女優の平野璃子さんです」
 今西はマネージャーに伴われておそるおそるやってきた平野璃子を八木沼に紹介した。
 八木沼が平野にぎこちなく頭をさげるのを、むっとした目で腕組みをした佐々木は睨みつけた。
 ったく、なんやね、あいつは!
「佐々木さん、ほんとに申し訳ない。八木沼選手はちょっとお茶目なんですよ。いつもは明るい気のいい人なんで、佐々木さん、こんなことで仕事降りるとか、言わないでくださいよ?」
 今西が本気で佐々木をなだめにかかる。
「ほんっとにすみません、悪気はないんです。八木沼はああ見えて、若手選手の中では礼儀正しいやつで通ってるんですが」

 


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