好きだから 152

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 アスカにも申し訳ないと言わずにいられなかったが、秋山さんが謝る必要なんかどこにもないわよ、と彼女はひたすら水波に対して文句を言っていた。
 そういった経緯を良太も知っているので、秋山が余計に疲労を背負っている気がして何か自分にできることはないかと思うものの、はっきり言って良太のどこにも人の手助けをしている暇はないのである。
 放映後に大きな反響を呼んだ「レッドデータアニマルズ‐自然からの警告」は既に第二弾へと動き出しているし、前作から少し時間が空いたが、志村主演、奈々共演の「大いなる旅人」の第五弾が進行中で、今回は京都で、安倍晴明の謎を取り上げるというのだが、小笠原が出演予定の大阪へ行ったと思えば、フジタ自動車のCMで志村と共にドイツへ飛んだりと工藤が相変わらずワーカホリックなため、俺の代理でお前が京都に顔を出せ、とか言われて、「パワスポ」や「レッドデータ」の打ち合わせの合間を縫って明後日には良太が京都に飛ぶことになっている。
 くっそ、「大いなる」までも俺に丸投げしようとか、そうは問屋が卸さないからな!
心の中で工藤に文句を並べながら、良太がスケジュールの確認をしていると、アスカが傍に立っていた。
「ねえ、ちょっと、大事な話」
 いきなり小声で腕を引っ張られた良太は、工藤のデスクまで連れていかれて、二人してしゃがみ込んだ。
 ちょうど鈴木さんは、荷物を運びこむ宅配業者に対応していた。
「いったい、何ですか?」
 今度は何を企んでいるんだ、とばかりアスカを見ると、どうやらいつになく難しい顔をしている。
「さっき、車の中で気づいたんだけど……秋山さんがさ」
「秋山さん?」
 よもや、あまりの多忙ぶりに秋山がまさか、とあらぬ推測をしかかっていた良太に、「沢村っちが変だっていうのよ」とアスカが口にした。
 


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