好きだから 167

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「はあ、かなり、強引に押しきられてしもて」
 色々なちょっとしたことが、佐々木の心を揺さぶる。
 沢村という名前はどこからか飛び出してくる。
 そのたびごとに胸に打たれた杭がキリリとさらに奥へ深く打ち込まれるような気がする。
 でもそのうち時間が経てば………。
 その時、壁に設置された大画面にオーケストラが写し出され、青いドレスをまとった女性がピアノの前に座ると、やがて演奏が始まった。
「ショパンのピアノ協奏曲ですね」
 佐々木は笑顔のピアニストを見つめた。
 あどけなさが残る表情は柔らかく、美しかった。
 力強い導入で、ピアニストの指が音を奏でる。
「内村史穂。彼女、こう見えても三十代なんですよ。少女っていってもいい感じでしょ?」
 藤堂が言った。
「芝アートさんが最初にきて置いてったデータ。細くてきゃしゃなのにダイナミックな演奏するんです。チャイコフスキー国際コンクールで優勝経験もあるんですが、家庭が複雑らしくて、あまり日本に来ないけど、ウイーンフィルと共演で久々日本で演奏することになって来月中旬以降に一度来日するみたいなんだ」
「何かほんとは藤堂さん、初めからやりたかったんじゃないですか?」
 嬉々として説明する藤堂に、浩輔が口を挟む。
「鋭いね、浩輔ちゃん。実はウイーンで一度彼女の演奏を聞いたことがあって、以来ファンなんだ。ただね、今回なんてったって仕事が詰まってたからね~、なくなく断ったんだが」
「ええ感じですね~、音、透明感あるのにダイナミックで」

 


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