好きだから 168

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 音楽でも美術でも心惹かれるものはすんなり入ってくる。
「でしょう? さすが佐々木さん」
 佐々木の感想に藤堂が勢いづく。
「本人にもあったことがあるんだが、普段はこうふわっと妖精っぽいっていうか、あ、そうそう、森野友香さん、彼女に何か雰囲気が似てるんですよ」
 佐々木は笑った。
 実はそんな風にも思ったからだ。
 佐々木はネットで見た友香の絵を思い出して、自分と別れてようやくあんなはじけるような笑顔を取り戻したのだと少し切ない気もしたが、それでよかったのだと今は思えるのだ。
 沢村かて、そのうち俺とのことなんか忘れて活躍するに決まっとる。
 MLBにかて行くんやろうし。
「佐々木さん、……佐々木さん」
 藤堂が目の前に立っていた。
「お疲れのようだから、しばらく音楽でも聴いててください。俺、ちょっと出かけてきます。河崎らも出かけましたし、ごゆっくり」
 どうやらぼんやりしていたらしいと、佐々木は気が付いた。
「かなり、お疲れですね、やっぱ。どうぞ、俺のことは気にしないで休んでて」
 そう言って浩輔も自分のデスクに戻っていく。
 確かに、疲労困憊の時にシャカリキになってやっても、うまくいかないことが多い。
 少しだけ、と思って画面に視線を戻すと、ピアノの音が心の中にまで流れ込んできた。

 


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