好きだから 170

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「おう、俺、帰ってるか?」
 また一つ大きな溜息と共に出ると、タフな男の声がした。
「ああ、こんばんは。いてるけど………」
「ちょっといいか? 近くまで来てるんだ」
 今夜はちょっとと断る間もあらばこそ、三分もしないうちに、ドアチャイムが鳴った。
「よう、忙しそうだな」
 ドアを開けると、ビールが入った袋を掲げながら靴を脱いで、稔は頓着なくリビングに入ってきた。
「お前忙しそうだし、最近、飲みも行けねぇし、今日あたりいねえかと思ってよ」
 脱いだコートを無造作に横に置くと、ソファにどっかと腰を下ろした稔は、プシュッと軽くプルを引いてよく冷えた缶ビールを二つテーブルに置いた。
「ほな、お疲れさん」
「お疲れ、って、お前、やつれてねぇ? 痩せたろ」
 仕事が終わった頃、藤堂がデリバリー続きで申し訳ないがと言いながら、一流の寿司屋からの出前を取ってくれて、浩輔と三人、疲れた顔を突き合わせて食事を済ませたが、佐々木はさほど食が進まず、また浩輔に心配された。
 確かにここのところ体重も減った気がしていた。
「まあ、今月はかなりきついよって」
 あまり飲みたい気分ではなかったが、せっかくなので佐々木はビールに口をつけた。
「今日やらねぇと大赤字ってわけでもねぇんだろ? お前、寝てねぇな?」
「仕事が重なってしもて、納期いうもんがあるからな」
「まあ、とにかく、寝ろ。お前、大概丈夫なくせに結構気持ちが身体に出やすいたちだからな、昔から」

 


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