好きだから 171

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 ビールを飲み干した稔は立ち上がると、コートを掴んだ。
「え?」
「気づいてねぇだろ? 小学校二年の時お前、腹痛起こして遠足欠席したことあったよな、前の日、お前のクラスのやつに、お前のオヤジが女と浮気してるって言われて。中学ん時か、急に熱出して学校休んだのも、やっぱ前の日お前に告って振られた女子が、自分の方がキレイだから振ったとかって言いふらして」
「何やね、それ、ハハ………、そないなことあったか?」
 佐々木は力なく笑う。
「二回ともうちの母親が診たから、憶えてんだよ」
「稔さんのが、俺のことわかっとるみたいやね」
「フン、伊達にお前の親衛隊やってたわけじゃねぇ」
 稔は、「また、お前が弱ってねぇ時にくる」と言いながら、玄関に向かう。
「ああ、また」
 佐々木はリビングのドアにもたれて言った。
 すると靴を履いてから稔は振り返った。
「お前さ、沢村のヤツに嘘ついて突き放したりするから、弱ってんだろ」
「え………」
 稔は佐々木を睨みつけるように続けた。
「俺を盾にしようがダシにしようがお前の気が済むんなら一向にかまやしねぇ。けどお前、あいつが好きなくせに、露悪的なこと言って怒らせて、いいか、沢村がスター選手で立ち位置が危なくなるとか、んなこたどうでもいい、身を引くとか、百年前のベタなメロドラマのおばちゃんみたいなことやってんなよ!」

 


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