好きだから 174

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 実のところ、一日中体力的疲労に加えて精神的疲労度が半端なかったのだ。
 このクソ忙しい時に、しかもたまたま工藤が会社にいる貴重な時だというのに、いきなりあの榎木佳乃がオフィスに現れ、二人は仲良くランチに消えてからオフィスに戻ってこなかった。
 いやいや、今はそれは置いといてだ。
「いったい何があった? 全部話せ。即、話せ。とにかく、話せ!」
 腑抜けたような表情をしている沢村の胸倉を思わず掴んで、良太は詰め寄った。
「どうせ俺は身勝手なやつだからな」
「はあ?」
 良太の手を胡乱な目つきで見上げる沢村は離す気にもなれないでいた。
「たいてい、傲慢な俺に嫌気がさして、俺から離れていくのさ。まあ、今まで、女に誠実だったことなんかないから、当然といや当然だ。大体、沢村の名前に寄ってくるやつらなんか誰も信用しちゃいなかったしな」
 沢村はぼそぼそと愚痴っぽい口調になっていた。
「何、すねたようなこと言ってんだよ」
「だから身勝手でウザくて重いんだと。だから付き合いきれねぇって突き放されたんだよ」
 相変わらず魂の抜けたような顔で、どこを見るともなく視線を宙に向ける沢村から良太は手を離した。
「はあ? そんなこと佐々木さんが言うわけない!」
「事実さ。もう俺の顔なんかみたくねぇんだろ」
 自棄気味に沢村は残りのビールを飲みほした。
 そこまで嫌われたとは思いたくはなかった。
 けど、俺がいることが佐々木さんの感情を逆撫でるってことだ。
「お前、それで……」
「やっぱ俺にはお前しかいない!」
 良太の言葉を遮って、沢村は良太に抱きついた。
 これ以上俺の我儘だけで佐々木さんを苦しめるとか、したくないよな。

 


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