好きだから 180

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「真面目に言ってるんだぞ、肇は。どこいったんだよ、いつもの、俺がやってやるってな過剰な自信家の沢村智弘は! 落ち込んでる暇があったら自主トレに身を入れろよ!」
 肇に便乗して良太も沢村に檄を飛ばした。
冗談ではなく、こんなところで沢村にリタイヤなんかされた日には………。
「ただでさえいろんなプロスポーツが台頭して、プロ野球も昔みたいにゲームやれば観てくれるなんて時代じゃない、スター選手がいなきゃもう孤城落日なんだっ!」
「俺一人いなくなったところで、次代のスター候補なんかいくらでもいるさ。大輔なんかもう既にスター様に片足かけてるぜ」
 激昂する良太に沢村も激昂で返す。
「ただし、佐々木さんだけはあいつなんかに譲るつもりはないからな」
 小声でブツブツ沢村が呟いた言葉は周りには聞こえなかった。
「大輔って、八木沼のことかよ?! お前、あんな若造に追い越されたら悔しくねえのかよ、男だろ!」
 話の方向がズレているが、肇も負けじと声を荒げて沢村にくってかかる。
「いい加減にしてよ!」
 ダン! とテーブルを叩いて男ども三人の激論に水をさしたのはかおりだ。
「振られたくらいで? 男だろ? そんな昭和のオヤジの根性論なんか未だに振りかざしてるんじゃないわよ! アラサーっつったってまだ二十代のくせに! 見て見なさいよ、政治はグダグダだわ、定年離婚されるわ、昭和のオヤジの成れの果て! 女とか恋とか大事なもんをおろそかにしてるから、そういう末路を辿るのよ!」
 その剣幕に三人は押し黙った。
「沢村くんも一回や二回振られたからって、落ち込んで自主トレもできないとか、情けないことばっか言ってないで、諦められないんなら、もう一度当たって砕けるくらいしたらどうなのよ!」
 かおりにビシッと指導を受けて沢村はポケッとかおりを見上げた。

 


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