好きだから 182

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「おい、沢村、カード! 沢村!」
 良太は飲み過ぎた沢村に肩を貸して、店はオフィスから近かったのに、仕方なく沢村の定宿であるホテルの部屋までタクシーで送ってきた。
「おう、わーかってますよ、良太ちゃん!」
 何せ、あれから日本酒、ウイスキー、焼酎とそれこそ店にあるだけの銘柄を飲んだのではないかと思うくらい、沢村はかおりと一緒になって飲み比べを始めたのだった。
 細い身体をして沢村と対抗するくらいかおりは酒が強い。
 ざる、というのがはまり過ぎる。
 沢村とかおりが、これはうまい、これはちょっとね、などと言いながら、カパカパやっているのを横目に、ちびちびと日本酒をやりながら良太と肇は世知辛い世の中をぼそぼそと憂えていた。
「あったぞーーー」
 ブリーフケースを探っていた沢村は声をあげた。
「ばっか、夜中にデカい声出すなよ!」
 小声で窘めながら、沢村からカードを奪ってドアを開けた。
 ベッドルームまでもつれるようにして連れてきた沢村を、良太は力一杯ベッドに押しやると、肩から落ちそうになっているリュックを掛け直した。
 かおりはかなりべろべろに酔っていたものの、肇はガッシリタイプだから女性の一人くらい、この沢村をここまで連れてくることに比べればどうってことはない。
「ったく、冗談じゃねーぞ! 重量級の連中の世話なんかぜってーもーやらねーからな」
「酒~!」
 踵を返そうとした良太の背中に、沢村は呻いた。
「いい加減にしろよ! この酔っ払い!」

 


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