好きだから 193

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「え? そんなことあったの?」
「まあ、結局元サヤで、沢村っちは振られた形だけど、佐々木ちゃんと付き合うまでは、良太、あんなオヤジより沢村っちのがいいじゃんなんて思ってたんだけどね。でも傍で見て何言ったって、本人、工藤にもう刷り込み状態だから」
 直子は思わず笑う。
「やーん、刷り込みっ! 受ける! 良太ちゃん一直線だもんね」
「何せ、今じゃ、良太なしじゃうちの会社ガタガタになるの目に見えてるから、そこんとこもっとちゃんとしてもらわないと、工藤さんに! とは思ってるんだけどさ、工藤さんがああじゃ、いい加減良太だってキレたのかもって、さっきちょっと焦っちゃったのよ。きっとあたしの思い過ごしだ」
 アスカが、はあ、と深く息をつくと、直子もアスカに同調したように、溜息をつく。
「佐々木ちゃん、何も言ってくれないし、わかんないけど、やっぱり沢村っちのことを思って別れようとか思ってるんじゃないかな。沢村っちって、スターって位置にいるのに佐々木ちゃんのことになると、全然そんなことどうでもよくなっちゃうみたいだから、植村の時もそうだったし、スキーの時だって、無理やり飛んできたり、平気で危なっかしいことやっちゃうから」
「でもそのくらい恋人に情熱的になれるって、あたしは沢村くんのそういうとこ好きだけど」
「佐々木ちゃんは多分、そういう情熱みたいなものは一過性だと思ってるんだわ。友香さんとのことがあるから。それにやっぱ、今回お母さんが怪我されて、入院といっても一日だけだったけど、はたと我に返ったっていうか、自分のことだけ考えてればいいってわけにいかないって」
 アスカはそれを聞くと、なるほどと頷いた。
「あの見るからに怖そうなお母さん。大和屋のお茶会の時会ったわ。佐々木さんによく似てきれいな人だったけど。何か、あれね、相手が男とかって、世の中の道を外すなんてもってのほかです、とか言いそうな雰囲気」
 アスカは年初に行われた大和屋のイベントで、ショーに出たのだが、そこに設けられていた茶の湯の席に入る時、扇子がないことを注意され、予備の扇子を渡されたのだ。
 


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