好きだから 194

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 それは相手が有名人であろうと関係ないようで、沢村が入ろうとしていた時も、背筋をしゃんと伸ばしなさい、などと注意されていたのを思い出した。
「う……ん、どうだろう。まあ、毎朝、仏壇に、周平にええご縁がありますように、って手を合わせるって、佐々木っちがよく笑ってたけどね……母一人子一人………だしね~」
「うわあ、難関だねぇ………。二人の問題じゃん! ってのは正論なのに。あたしのモデルの友達、男の子だけど、中学の時から付き合う相手男で、親にバレて勘当されたままだって。二人の問題だけど、親に縁切られるのはつらいって言ってた。ましてやたった一人のお母さんって、やっぱ考えちゃうよね。しかも相手が沢村くんとかだと」
 しばし二人ともあまりにも納得して項垂れて、言葉が出てこなかった。
「でもさ」
 ようやくアスカが顔を上げた。
「あたしはあの二人、すてきなカップルだと思うから応援したいんだ」
「もちろん私もそう。あ、今度の金曜日って、青山プロの忘年会だよね?」
 直子の目がさっきより輝いている。
「うん、私、撮影終わったら駆けつけることになってるよ。何せ、人手不足だから」
「良太ちゃんに沢村っちも呼んでもらおうよ」
「業者相手の忘年会だけど、この際、いいか。佐々木ちゃんも出席なんだよね?」
「うん。何か、プラグインでトラブったみたいで、今朝出かけてったけど、絶対、佐々木ちゃんもつれていくから」
 オフィスを出ると、外は静かに細やかな雨が降り続いていた。
アスカはタクシーを拾うと、携帯の電源を入れて案の定何回かコールしていたらしい秋山に連絡を入れた。
「今どこにいるんです? 鈴木さんが急に出て行ったって言うし、良太も心配していましたよ」
「ちょっと用があって。直接スタジオに行くから」
 そう怒ってはいなかったが、秋山は時間厳守を言い渡した。
「なーんかさ、世の中って、思うようにいかないよね~」
 アスカは雨粒が流れる窓に顔を向けながら呟いた。

 


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