好きだから 195

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 夕方近くなっても雨はしとしとと降り続いていた。
 外苑前の方から二四六を走ってきた濃いブルーのプジョーが表参道交差点を通り過ぎて、青山大学方面へやや行ったところにあるビルの駐車場に入った。
 大通りに面して建つ、こ洒落た四階建てのビルの螺旋階段を上がった二階が広告代理店プラグインのオフィスだ。
 三、四階はギャラリーになっており、一階には四台分の駐車場とエレベーターの入り口があり、階段横にも二台分のスペースがある。
 車を降り立った藤堂義行が螺旋階段をあがり、オフィスのドアを開くと、中は滅多にないような重苦しい空気が漂っていた。
「お疲れ様です」
 浩輔が藤堂を認めて画面から顔を上げた。
 浩輔の横に座る佐々木の怜悧な横顔は、一種近寄りがたいほどの研ぎ澄まされたオーラを纏い、その眼は一心にモニターを見つめていた。
「佐々木さん」
 藤堂はやや緊張気味に声をかけた。
「今、北海道と京都の映像に常盤繁友の映像重ねて、やってみとるけど」
「これで十分、まるで常盤さん北海道にいるみたいだけど」
「あくまでもラフやから」
 淡々と説明する佐々木に苦笑して、「ちょっとあちらで。浩輔ちゃんも」と藤堂は促した。
 壁に設置された大きなモニターの前のソファに佐々木と浩輔は腰を下ろしたが、昼前からずっと作業を続けてきた二人ともに体力消耗状態だった。
「佐々木さん、大丈夫ですか? 顔色悪いし、痩せたでしょう?」

 


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