好きだから 196

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 浩輔は向かいで腕組みをしてソファにもたれかかっている佐々木を案じていた。
「師走やしな。こんなもんやろ」
 佐々木は情けなさそうな笑みを浮かべた。
 いつものことながら、直子や浩輔に心配させていることがもどかしい。
「お疲れでしょう。ちょっと甘いものでも召し上がって、一息つきましょう」
 大きなトレーに熱い紅茶が入ったポットとカップ、それにマスカルポーネを使ったくちどけのよいチーズケーキを乗せて藤堂がキッチンから現れた。
「これ、美味しい!」
 一口ケーキを口にした途端、浩輔が思わず言った。
「美味いだろ? 俺もこないだ人にもらって早速買おうと思ったら、何か評判になってるみたいで、いつも結構な行列でね。今日はそれでも雨のせいか、人が少なめだったから」
「藤堂さん、スイーツ、ほんまに詳しいんやね」
「ま、一応、実家がチョコレート屋ですしね」
 ひと時美味なスイーツとお茶でまったりとした三人だが、さてと、という藤堂の言葉で現実に舞い戻った。
「佐々木さんには朝から面倒なことに巻き込んでしまって申し訳ない」
「いや、俺こそ、ちょっと熱うなってしもて」
「いやいや、よくぞ言ってくださったと思ってますよ。それに元はと言えば、向こうの思惑に気づかなかった俺の責任でもある」
 藤堂は珍しく険しい顔で言葉を結んだ。
「そこで、向こうがその気なら、こちらも奥の手を使うことにしました」
「奥の手、ですか?」
「常盤さんに二、三日こちらに来ていただく」

 


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