好きだから 198

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 恐ろしく冷たいクリアな言葉は佐々木の口から出たものだった。
「……っ!」
 鋭い凍てついた湖面のような視線を向けられた我孫子は一瞬怯みを見せた。
「そう、ですね、……一週間、というところでしょうか」
 脂汗が我孫子の額に浮かんだ。
「わかりました。こちらも既定路線では物足りないと思っていたところです。それでは一週間後に」
 冴え冴えとしたセリフを残して佐々木は藤堂と共にエレベーターで駐車場に降りた。
「申し訳ない。つい、カッとなってしもて勝手なことを」
プラグインに向かう車の中で佐々木は言った。
ここでキレてはプラグインに迷惑が掛かるとじっと我慢を強いられてきた佐々木だが、広報部を出たところで、久々、やってもた、と反省したものの、時既に遅しだった。
「いや、佐々木さん、さっきは超カッコよかったですよ。あのブルドッグオヤジ、佐々木さんの対応にあたふたしてるのを見て溜飲が下がりましたよ」
 感嘆気味な口調で藤堂は続けた。
「しかし、佐々木さんのスケジュールがただでさえタイトなのに」
「逆にこんな無茶ブリ理不尽も度を越してる、第一、問題は常盤さんでしょう」
 早速制作会社の手配をしている藤堂に、春日さんにもあたってみますからと、佐々木は言い、古巣であるジャストエージェンシーもこの時期てんやわんやで、業者も無論同じくなはずだとは思いつつ、一応春日に連絡をしてみた。
 春日は探してみるとは言ったものの、難しいぞ、という答えだった。

 


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