好きだから 199

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 浩輔にデータから北海道や京都の映像を探させ、常盤の映像と重ね合わせて作り込みはじめた頃、藤堂が難しい顔でオフィスを出て行って、ようやく戻ってきたその表情は、割と軽くなっていた。
「ま、今日あちこち駆け回って仕入れた情報によると、どうやらあちらさんは最初からそのつもりだったようです。元電映社で俺らより少し前に独立して代理店立ち上げた武腰という男で、コンペやったイーグルアイの代表、覚えてませんか? こいつが実は我孫子の背後にいたんですよ」
「どういうことです?」
「この武腰って、俺らがまだ英報堂時代に何度かコンペで顔を合わせましてね、こっちは全戦全勝、それを未だに根に持って、俺ら、特に河崎を目の敵にしてたんですよ。イーグルアイって結構羽振りいいらしくて、まあ、細君が大手銀行の頭取の娘とかのお陰で」
「はあ」
 佐々木はよくわからないまま、相槌をうった。
「我孫子は今年の春、東洋商事ドイツ支社から東洋不動産本社に異動になった男で、こっちは大阪支社長に栄転した前任者の古橋さんをライバル視してたようで、古橋さんの息のかかった社員を窓際に押しやったりしてね。そこに付け込んだのが古橋さんの時から東洋不動産の広報部に顔を利かせていた武腰で、どうやら黄金色のお土産は役に立たなかった古橋さんの後釜に入った我孫子に何かと貢いで仲良しこよししていたところへ、今回の案件が持ち上がったと」
「なんでプラグインとのコンペに?」
「それこそどうも、イーグルアイの既定路線にメスを入れたいという上からの御達しだったらしく、広報部にいる市東さんて古橋さんの頃の残党が上に直訴したみたいで」
 それを聞いて、佐々木ははあ、と息をついた。
「ああ、もう、佐々木さん、非常にくだらない理由が原因で、大変申し訳ない」
「しかし、いくら何でもここにきてあの我孫子がいちゃもんつけてきたところで、放映も納期は決まってるわけやないですか?」
「それなんだが、我孫子は古橋と組んで密かに別に進めていたらしい。イメージキャラクター、人気俳優の前泊林太郎」

 


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