好きだから 206

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 アディノの屋内練習場では朝から快音が響いていた。
 顔をのぞかせた良太の目に、二人のスラッガーは結構調子よさげに見えた。
 気になっていた沢村のバットが叩いたボールがきれいな放物線を描いて天井近くの壁に当たって激しい音をたてた。
 良太は何となくだが、沢村智弘がどん底から這い上がろうとしているように思えた。
「良太あ!」
 バットを置いて、タオルで汗を拭うと、満面の笑みを浮かべて手を振りながら先に良太のところへやってきたのは八木沼だった。
「何、何? 俺の顔みとうなったん?」
「八木沼さん、絶好調ですね。今日は正月特番の確認に参りました」
「ああ、全然OK。四日やったやろ?」
「はい、奪三振王のホークス千賀選手との同世代対談、よろしくお願いします」
「千賀、同じ関西同士で、結構おもろいやつやし、オチも最高なやつにしたる」
「って、いや、漫才特番じゃないんで、そこまでは………とにかく、上坂プロの斉田さんには改めてご連絡致します」
 若さのあり余った絶好調男を前に良太もタジタジだ。
「あんな、良太、ちょっと聞きたいことあんねんけど」
 ガハガハ笑っていた八木沼が、急に良太に真顔を近づけてきた。
「はあ、何ですか?」
 良太は訝し気に八木沼を見上げた。
「良太が作った沢村のCMン時な」
「いや、俺が作ったんじゃなくて、沢村が俺の事務所を通じてCMのイメージキャラクターとして……」
「まあ、そう、メンドイ話は置いといてやな、そのクリエイターいうん? 実際CM作ったヒト?」
「ああ、クリエイターさんがどうかしましたか?」

 


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