好きだから 207

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「その、クリエイターさんの佐々木さんておるやろ? 良太、知っとるよな?」
「そういえば、今度、朱雀酒造のCM、八木沼さんが起用されたんでしたね。佐々木さんが担ぎ出されたって聞きました」
「そう、その、佐々木さん、どこ行ったら会えるん?」
 良太はしばし思考が停止した。
「どこ……というか、CMの仕事が始まったら会えるかと」
 まさか、という思いで、良太は極力常識的な答えを返した。
「そうやのうて!」
 途端、八木沼はもじもじと徐々にニヤケた顔をさらして、「会いたいねん」とポツリと言った。
「は?」
「やから、ひとめぼれ、いうやつ?」
 まさかが大当たりして、良太はうーーん、と額にてをやって、しばらく言葉が見つからなかった。
 良太の頭の中では、まず、佳乃の件は全くなかったことのように昨夜遅くに良太を強襲し、スタジオに寄ったらアスカが最近調子を落としているというので、佐々木と沢村がぎくしゃくしていることに責任を感じているらしいと答えると、とっとと何とかしろと沢村に言えと言い、続きで「大いなる…」が云々と何だかだと命令して、さっさと京都に向かった工藤の顔が浮かんで腹を立て、直子とアスカが交互に現れてどうしようと半泣きし、やがて「パワスポ」の大山がぐったらぐったらと文句を言い、かおりと肇が現れてまたああでもないこうでもないと良太に訴え、沢村が佐々木さんと叫んでいた。
「なあ、良太なら、佐々木さんの居場所知っとんやろ?」
 寝不足もあって混乱を極めている良太の顔を覗き込んで能天気な男が、また繰り返した。
「八木沼さん、一応、確認しておきますが、佐々木さんが男性だということはご存知ですか?」

 


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