好きだから 21

back  next  top  Novels


 一行は勝手に携帯のシャッターが押されたりする中を客室用エレベーターへと向かった。
 ややあって、またエレベーターが開き、黒のスーツの若い男が一人慌てたようすで降りたが、すぐに携帯をポケットから取り出した。
「あ、お疲れ様です。え、東京駅ですか? 早かったんですね。あ、えっと、実は今夜ハロウィンパーティで………、藤堂さんとか、佐々木さんとか…いや、あの、クリスマスはクリスマスで、今は……、は? かぼちゃパーティって……あ、いや、もう、早めに切り上げるつもりで……!………何だよ、いきなり切らなくっていいだろ!」
 ブツブツ文句を言いながら若い男が客室用エレベーターへ向かった頃には、ロビーラウンジの客たちもすっかり静かになっていた。

 ウォーターフロントにあるこのホテルのガラス張りの大きな窓からは東京湾をメインにした夜景が一望できる。
三十八階にある広いスイートルームでは、着飾った面々が、あちらこちらでワインやシャンパンの入ったグラスを手にゆったりと談笑していた。
 テーブルにはフィンガーフードやスイーツが並び、オレンジ色のかぼちゃ型のランプやかなり存在感のある魔女の人形や羽を広げた蝙蝠などがここかしこにディスプレイされている。
「しかし、この夜景はあまり見たくない気がしないか? 浩輔ちゃん。古巣に戻ったような気分にさせられる」
「はあ、確かに………でも、藤堂さん、何でこのホテルに? しかもこんなスイートよく押さえられましたね? 昨日の今日で」
「巷で大騒ぎのハロウィンとは一味違うクールさを演出したんだ」
「はあ」
 また藤堂のオブラートに何重にもくるみまくったような言い回しに浩輔は適当に相槌を打つ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ