好きだから 216

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「そういうわけにはいかんやろ。正式に社員になってもらうんは春からやからまだジャストエージェンシーの出向扱いやし、うちブラックになってまうよって、明日は浩輔と制作会社行って納品済んだら俺もさすがに休みたいから、明後日まで臨時休業にしよ?」
「明日、納品できそう?」
「そうやね」
「うん、わかった。じゃあ、明日、会社にお礼を届けてからお休みにさせてもらうけど、納品済んだら佐々木ちゃんも休むんだよね?」
「うん」
 にっこり笑う佐々木だが、直子は訝しむ。
「ちゃんと休むんだよ? オフィスで寝ちゃったりしちゃだめだからね? わかった?」
「肝に銘じます」
 直子にはそう宣言したものの、八時には終わると言っていた仕事は、気に入らないところを何度も直したりしているうち、九時を回ってもまだ終わらず、佐々木はライトを自分のデスク周りだけにして続けた。
 それでも直子に借りたうるさい音楽のお陰で軽快に手は動き、険しいリズムが心地よくすらあって、案外功を奏したようだ。
 胸の中のざわめきがいやだった。
「直ちゃんにまたPCにでも入れてもらお」
 佐々木が日付が変わる頃にようやくPCの電源を落とすと、クリスマスツリーが一人静かに煌めいていた。
 オフィスを施錠して階段を降り、愛車に乗り込むと、佐々木はエンジンをかけた。
 夜の闇に紛れて車が出ていくのを大柄な男が見送っていたとかは知る由もない。
「本物のストーカーだよな」
 溜息と共にそう呟くと、男は路肩に停めてあった自分の車に乗り込んで間もなく走り去った。

 


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