好きだから 218

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「……佐々木ちゃん、私がこれでもかっていうくらい、口をすっぱくして言っても、全然無茶ばっかして、このままじゃ、ほんとに倒れちゃう」
 絞り出すようにそれだけ言うと、またポロリと涙がこぼれた。
「まあな、あいつの舵取りは難しいんだ。仕事でもなんでも夢中になるとそれにのめり込む、できるまでやる、ってやつだから、ここにいた時はあいつの営業担当は決めないで俺を通してやらせるようにしてたんだ。だが、ここ一年、あいつの仕事は目を見張るものがあったぞ。思い切って独立させてよかったとな。直、俺はお前がなかなかうまくあいつをフォローしてくれてると思ってたんだ。そういや、こないだトラブったって言って、制作陣確保できないかって言ってきたが、うちも周りも手一杯だったし、何かあったのか?」
 直子はここのところの状況を話せる範囲で話し、クライアントの策略で思ってもみなかったやり直しをあり得ない期間でやったのだが、とにかく佐々木は睡眠時間も削り、食事も口に持っていって食べさせなければならなかったことを説明した。
「代理店、どこだ?」
「プラグイン」
「河崎か。あの男はキレ者なのは確かだが、あちこちで敵を作ってるからな。とばっちりをくらったか」
 春日は強面に渋面を作る。
「佐々木ちゃんもクオリティ下げたくないってとことんやっちゃうから」
 仕事のことだけじゃないんだけどね。
 心の中で直子は呟いた。
「ところで佐々木、あいつ、最近、顔を見せないし、スタッフの件確保できたって連絡があった時、久しぶりに飲むかって言ったんだが、言葉を濁しやがるし。新しい相手とか、いないのか? まあ、そんだけ忙しけりゃ、そんな暇ないか。あいつのオフクロさんともとんとご無沙汰だが、周平にええご縁がありますように、って、耳タコだ」

 


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