好きだから 219

back  next  top  Novels


 春日は新しい梅昆布を咥え直して笑った。
「あたし、佐々木ちゃんとの付き合いは、佐々木ちゃんの前の奥さんよりもう長いし、佐々木ちゃんのこと、一番わかってるつもりなんです」
「お、おう」
 急にまた何を言われるのかと、春日は身構えた。
「でも、佐々木ちゃんは前の奥さんの友香さんのこと、嫌いで別れたわけじゃない、逆に友香さんのことを思って別れてあげたんでしょ?」
「……まあ、な」
「でも、私、わからない。どうしてあんなに優しい佐々木ちゃんと、自分が絵が描けないとかっていう理由で別れたりできるのか。そりゃ、あの佐々木ちゃんだから、言い寄る人なんか色々いるかもしれない、誰かに取られたらって疑心暗鬼になっちゃったってのはわからないではないけど。だからって、佐々木ちゃんを傷つけていいってことにはならないよ」
 憤懣やるかたないという直子の思いは、春日にも伝わった。
「……まあ、な。あいつら、佐々木と友香ちゃん、付き合い始めた頃はそらもう仲良くて、ベッタベタってんじゃなくて、みんなが認める可愛いカップルでさ。順調に結婚して、まさか別れるとか、誰も思っちゃいなかった」
 春日は昔のことを思い出したのか、ちょっと笑みを浮かべた。
「オフィスの奥の部屋に飾ってある絵、わかる?」
「もちろん、あたしあの絵好きなんだ。じわってくる感じ、あれ、佐々木ちゃん、自分の家の周りを描いたやつでしょ? 何でオフィスの方にもってこないのかなって、いつも思うんだけど、佐々木ちゃん、あれは奥でええ、って言うの」
「あれな、友香ちゃんがスランプな頃、佐々木が一緒に描こうって二人でスケッチして描いたやつなんだ」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ