好きだから 229

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 手塚医院の前まで来ると、白衣にサンダル履きの稔が医院のドアを開けてやってきた。
「おい、車は?」
 稔は胡乱な目つきで佐々木の周りを見回した。
「疲労の極致で、タクシーで行こう思て」
「お前何考えてんだよ、タクシーなんて、どんだけかかると思ってるんだ」
「たまの贅沢やから、かまへんて」
 稔は腕時計を見て、「一時過ぎか。ちょっと待ってろ」とドアの向こうに引っ込んだ。
 かと思うと、五分もしないうちにジャケットを羽織って、スニーカーに履き替えて出てきた。
「車で送ってやる」
「そんなことせんかてええ!」
 佐々木の言葉も無視して、稔は駐車場の奥に停めてあった白いラングラーを出してきて、運転席から顔を出し、「乗れよ」と言った。
 四ドアのゆったりタイプで、たくさん荷物が積めそうだ。
「何、これで健斗とキャンプとか行くわけや?」
 サイドシートに乗り込むと佐々木はバッグをリアシートに放った。
「まな。健斗が唯一カッコいいと言ってくれたのがこれ」
「ほんまにええんか? 健斗と何時に約束してるん? 午後の患者さんあるんやろ?」
「午後の診療はオフクロに頼んできた。健斗のうちに六時だから、ま、ギリだな」
 見た目はごついがインテリアはハイテクだし、なかなか機能的な車だが。
「サルーンとかとは比べるなよ」
 稔が念を押した通り、オフロードには強いだろうが、乗り心地としては最高とは言えないかも知れない。
「けど、俺ほんまに疲れて睡眠不足やから、寝さしてもらうで」

 


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