好きだから 23

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 むしろ面白そうに笑うアスカに横やりを入れたのは、黒いスーツに胸元にネームプレートらしきものをつけた秋山だ。
「やだ、秋山ちゃんじゃない、てっきりここのホテルの人かと思ったわよ、同化し過ぎ」
 山内ひとみが彼らの会話を聞きつけて割り込んできた。
「私はパーティの準備をしていたので、これでいいんです」
「もう、須永ちゃん、黒タイに黒スーツに黒靴下ってねぇ、秋山ちゃんを見習ってちょっとはコスプレして楽しみなさいよ、お通夜みたいじゃないの」
傍らに立つ須永はひとみのマネージャーで、この大女優に振り回されながらもよくついていっている男だ。
「そんなこと言われても、ドレスコードは黒をベースって………」
「チーフをアクセントにするとか、そういうちょっとした機転が大事なのよ。だから彼女に振られるのよ」
「ほっといてください。だったらヤギさんなんかいつものまんまじゃないすか」
ひとみは金田一耕助もどきと話している髭面のもっさり男を見やってケラケラ笑い出した。
「ヤギちゃんなんか、いつもがゾンビだからいいのよ」
「何か、すごい言われようだね、ヤギさん」
「おう、ひとみの御託をいちいちまともに聞いてたらキリがねぇ。藤堂さん、焼酎はねぇが、ポン酒はなかなかいけるな」
「そりゃよかった」
 その時ドアチャイムが鳴った。
「やっと真打登場ですね」
 藤堂のからかいに少しむっとした顔で入ってきた大きな男は一瞬であたりを見回した。
「あら、カッコいいじゃない、沢村っち! 黒執事!」
 テールコートに蝶ネクタイの沢村は迷わず窓際にいたゴスロリカップルの方に足を向けようとして、アスカに阻まれた。

 


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