好きだから 234

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 稔は佐々木の喉を覗き込み、「赤いぞ、腫れてる」といいながら、体温計を渡す。
「目もウルウルしてるし。インフルエンザの予防接種したか?」
「まあ、一応。疲れが溜まって、ただの風邪ちゃう?」
「決めるのは俺」
 ピピッという音で、佐々木から体温計を取り上げると、稔はううむと唸る。
「三十九度あるじゃねえか! バカやろ」
「ほんまに? 全然気づかんかった」
 はああ、と今度は声に出して溜息をつくと、「一応、インフル、検査しとくか」と言いながら、稔はケースから検査キットを取り出した。
「まあ、インフルじゃねぇみたいだが、とにかく寝てろ。寒くないか?」
 陰性と出たキットをしまって、稔は佐々木に向き直る。
「なんや、さっき、車の中でちょっと寒かったみたいな気ぃしたけど」
「何でそん時、言わねぇんだよ!」
「ちょっと熱あったからて、大の男が、風邪やったら寝てれば治るやろ。稔さん、とっとと帰ってええよ」
 へらっと笑う佐々木を残して、「買い出し行ってくる」と渋面のまま稔は出て行った。
 佐々木はズボンやセーターを脱いでTシャツ一枚になると、毛布の中に潜り込んだ。
 頭がくらくらするのは、熱のせいだったのかとあらためて思う。
 確かに結構身体を酷使したから、熱が出たりしてもおかしくはない。
 気を張っていたので、寝込まずにいられたのだろう。
 クッソ、あいつのせいや。
 いきなりうちに来るとか電話をしてきた沢村に転嫁する。
 やからこっちはこそこそ逃げ回るはめになったんやろ。
 もう、俺のことなんか放っといてほしい。
 そんなことを考えているうちに眠りに落ちた。

 


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