好きだから 236

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 呟いて稔は無暗に頭をかいた。
 大人になってもきれいな容貌は変わらない。
 子供の時、周平が寝込んでいると聞き、滅多にないことだったので勝手に部屋に入り込んでこんな風に寝顔を見ていたことがあったのを思い出した。
 淑子はああいう感じだから、周平が熱を出しても何もできずに、世話をしてくれるさわのがいてくれたお陰だろう。
 とにかく、すぐに連絡ができるように佐々木の携帯を枕もとに置いておかねばと思い、稔がリビングのソファに置いてある佐々木のバッグを取り上げた時、中の携帯が鳴った。
 携帯を取り出すと、画面に浮かんでいるのは沢村の文字。
 うううと唸りながら稔はまた頭を掻きむしった。
 今ここで俺が出たら、またこいつにあらぬ疑いをかけられることになる。
 そうは思いながらも、稔は電話に出た。
「佐々木さん?! 家にいるんじゃないのか?」
 ふうと一呼吸おいて、稔は言った。
「悪いな、佐々木じゃなくて。手塚というもんだが」
 するとしばしの沈黙があった。
「そういうことか。俺がそっちに行くって言ったから、佐々木さんはあんたを呼んだわけだ。よーくわかったよ」
「おい、待て待て待て待て、こら! 周平、今、熱出して寝込んでる」
 今にも切りそうな沢村を引き留めた稔は、佐々木が急に東京を離れようとしたのは、こいつが原因かと瞬時に理解した。
 あのやろう、どこまでも逃げを打つつもりだったな! バッカやろ!
「………え?」
 かろうじて沢村は電話を切らずに聞き返した。
「佐々木さんが? 寝込んでるって? 容態は? 入院してるのか? あ、点滴とか抗生剤とか! あんたの病院にいるのか? 熱ってどこが悪いんだよ?」

 


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